はじめに:「冬のだるさは、血糖のゆらぎが関係しているかも」

寒くなると、朝から体が重い、午後に眠くなる、夕方になると急に疲れる

そんな経験はありませんか?

それは単なる「寒さのせい」ではなく、血糖値の変動が関係していることがあります。

 

食事のあと、血糖値が急に上がり、その後に急降下すると、倦怠感や眠気、イライラが起こることがあります。

これは「血糖値スパイク」と呼ばれる現象で、体のエネルギーがジェットコースターのように上下する状態です。

 

体は急な変化に弱い生きもの。

血糖値の波をなだらかに保つことが、冬の疲れをためないコツです。

血糖値スパイク

 血糖値の波と「疲れ」の関係

血糖は、脳や筋肉の主要なエネルギー源。

これが安定していると体も心もスムーズに働きます。

一方、血糖値が乱れると、集中力の低下や気分の不安定、慢性的な疲労につながることがあります。

血糖値が急に下がると、体は「エネルギー不足」と判断し、アドレナリンを分泌してブドウ糖を補おうとします。

 

その結果、動悸がしたり、甘いものを欲したり。

これが午後の「甘いもの欲求」の正体である場合もあります。

また、血糖値の変動が続くと、一時的に血流調整が乱れ、冷えを感じやすくなることもあります(個人差あり)。

 

『冬の疲れ』の正体は、血糖の波にあることも。

食べ方を少し変えるだけで、体の調子が穏やかに整うことがあります。

 

なだらかな血糖コントロールのための3つの食べ方

血糖値の変動がゆるやかになると、体が楽に感じられる場合があります。

そのためには、日々の食べ方を少し工夫することが役立つこともあります。

ここでは、無理なく取り入れやすい3つのポイントを紹介します。

① 「主食・主菜・副菜」をそろえる

血糖値を穏やかに保つための基本は、主食・主菜・副菜の組み合わせ。

炭水化物(主食)を、たんぱく質(主菜)や野菜(副菜)と一緒に摂ることで、糖の吸収スピードをゆるやかにします。

「主菜がある食卓は落ち着く」

その感覚は、栄養学的にも理にかなっています。

② 「食べる順番」を意識する

同じ食事内容でも、食べる順番によって血糖値の上がり方は変わります。

野菜や汁物など食物繊維を含むものから食べ始めると、

胃の中で糖の吸収をゆるやかにし、食後の血糖値上昇を抑える効果が期待できます。

「ベジタブルファースト」は糖尿病予防でも推奨される方法。

一般の健康維持にも役立つ、シンプルで続けやすい習慣です。

③ 「温かい汁物」で代謝とリズムをサポート

温かい汁物を添えることで、胃腸の動きが促され、消化機能が整いやすくなります。

さらに、水分が加わることで食物繊維が膨らみ、満腹感を得やすくなる効果もあります。

 

また、汁物を先に飲むことで食事のペースがゆるやかになり、急激な食事摂取を防ぐ助けにもなります。

これらの働きが重なり、間接的に血糖値上昇をゆるやかに保つ効果が期待できます。

 

つまり、温かい汁物は「血糖コントロールの主役」ではなく、「リズムを整える伴奏者」のような存在です。

「湯気のある食卓は、心と体のリズムを落ち着かせるシンボル」。

冬こそ、『温度のある食事』をゆっくり楽しみましょう。

 

栄養士の視点:血糖値の安定は「心の安定」にもつながる

血糖値の変動が大きいと、脳のエネルギー供給が不安定になり、

集中力の低下やイライラを感じやすくなることがあります。

 

一方で、血糖値が穏やかに推移していると、神経伝達物質(セロトニンなど)の働きが安定し、気分も落ち着きやすくなります。

「食べ方が変わると、気分の波も静かになる」。

これは、食と心の両面で感じられる『やさしい変化』です。

 

ただし、気分や疲れの感じ方には個人差があります。

特定の疾患や服薬中の方は、かかりつけ医など医療専門家の指導を優先してください。

 

食事・体温・睡眠のリズムをそろえる

冬は活動量が減り、血流も代謝もゆるやかになります。

このとき、食事の時間・体温・睡眠のリズムを整えることが、疲れを溜めない基本です。

夜遅くに食べると、血糖値が高いまま眠りにつくことになり、翌朝の倦怠感につながることもあります。

 

また、消化にエネルギーを使うため、睡眠の質が下がることもあります。

食事は就寝の2〜3時間前までに終えるのが目安です。

「血糖値を落ち着かせて眠る」

冬の疲れを翌日に持ち越さないための、シンプルな工夫です。

栄養士のメッセージ

血糖コントロールというと「制限」や「我慢」を連想しがちですが、

大切なのは、無理をしない『ゆるやかな整え方』です。

 

少しゆっくり噛む、汁物を先にゆっくり飲む、野菜を先にひと口。

そんな小さな積み重ねが、体のリズムを穏やかにし、

冬のだるさや疲れをやわらげてくれます。

 

「がんばりすぎない健康法」こそ、続けられる健康法。

今日の一食を、少しやさしくしてみましょう。

 

まとめ

冬のだるさや倦怠感には血糖の変動が関係している場合がある

「野菜→主菜→主食」の順で食べると血糖値スパイクを防ぎやすい

温かい汁物は消化を助け、満腹感を高め、食事リズムを整える

血糖の安定は心の落ち着きにもつながる

食事・体温・睡眠のリズムを整えることで、冬の疲れを翌日に残さない

 

参考文献:

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
  • 厚生労働省 「e-ヘルスネット 栄養・食生活」