【食と暮らしのコラム 第16話】
はじめに:冬の「食生活」、この機会に見直してみませんか?
寒さが一段と厳しくなるこの季節。
窓の外を見るだけで身震いしてしまうような日は、暖房の効いた部屋でゆっくり過ごすのが一番の幸せに感じられます。
しかし、室内で過ごす時間が増えるにつれ、なんとなく「体」や「食」への関心が薄れてしまってはいないでしょうか。
「寒くて買い物に行くのが億劫で、家にあるもので済ませてしまう」
「加齢とともに食が細くなり、あっさりしたものばかり好むようになった」
こうした生活の変化は、シニア世代であれば誰にでも起こりうることです。
決して悪いことではありませんが、栄養バランスの偏りの一因となり、冬特有の「なんとなく本調子ではない」という感覚に影響している場合もあります。
もちろん、体調には睡眠や運動、持病などさまざまな要因が関わりますが、その中のひとつとして「食と栄養」を見直してみることは大切です。
私たちの体は、年齢を重ねても、心臓を動かし、体温を保ち、思考するために、毎日多くの栄養素を必要としています。
冬は寒さで外出の機会が減り、家にあるもので簡単に済ませる食事が増えやすくなると言われています。
炭水化物中心になることもあり、そのぶん肉や魚、野菜をとる量が少なくなる場合があります。
その結果、栄養バランスが崩れやすくなることが指摘されています。
そこで今回は、健康な体の土台を支える大切な栄養素のひとつ、「ビタミンB群」にスポットを当ててお話しします。
もちろん、タンパク質やほかのビタミン・ミネラルも含めた「全体のバランス」が大切ですが、その中でも今回はビタミンB群に注目してみましょう。
難しい栄養学の話ではありません。
いつまでも自分らしく、健やかな毎日を送るために、毎日の食事を少しだけ見直すヒントとしてお役立てください。
目次
1.食事を「エネルギー」に変える仕組み
これらは、車で言えばガソリンにあたる「エネルギー源」ですが、実は食べただけではすぐに力として利用されにくいことをご存知でしょうか。
体の中で、食べたもの(糖質や脂質)を、実際に脳や体を動かすエネルギーとして使える形に変換するためには、「補酵素(ほこうそ)」と呼ばれる栄養素の助けが不可欠です。
この補酵素としての働きを担う代表的な栄養素が「ビタミンB群」です。
イメージとしては、薪(食事)があっても、そこに火をつけるマッチ(ビタミンB群)がなければ、暖炉は温まらないのと同じです。
年齢を重ねると、消化吸収の能力や代謝のスピードが緩やかになり、食事の量自体も減る傾向にあります。
だからこそ、若い頃のように「量」でカバーするのではなく、「質」を意識することが大切です。
摂った食事を無駄なくエネルギーに変え、効率よく体内で利用するために、「ビタミンB群」という着火剤を意識することは、シニア世代の健康維持のひとつの大切なポイントと考えられています。
とくに寒い季節は、食事の内容が偏りやすくなり、その結果、ビタミンB群を含む食品が不足してしまう方もいると指摘されています。
2.冬に「栄養バランス」が乱れやすい理由
冬は生活スタイルが変化しやすく、気づかないうちに栄養バランスが乱れることがあります。
ここでは、その背景となる主な理由を3つご紹介します。
①炭水化物だけで済ませがちになる
寒い季節は、簡単に食べられる炭水化物中心の食事が増えやすく、肉・魚・野菜が不足しやすくなることがあります。
②買い物の回数が減り、食事が単調になりやすい
寒い日が続くと外出が負担になり、買い物の回数が減ることがあります。
その結果、家にあるもので簡単に済ませる日が増え、知らないうちに食事のバランスが崩れやすくなることがあります。
➂活動量が減り、食欲も落ちやすい
動く量が減ることで空腹を感じにくくなり、必要な栄養が不足しやすくなります。
これらのことから、冬は糖質中心の食事になりがちです。
糖質を上手に活かすためにも、ビタミンB群を意識した食事を心がけることは、毎日の食事からエネルギーを上手に活かすために役立つ工夫の一つと考えられています。
3.健康維持に役立つ「ビタミンB群」の働き
ビタミンB群は、単独ではなくチームで働き、体の中でさまざまな代謝を助けています。
年齢とともに代謝のリズムが変わり、食事量が少なくなりやすいからこそ、少しの工夫でしっかり栄養をとることが大切です。
① ビタミンB1:日々の活力を支える
ごはんやパン、麺類など、炭水化物をエネルギーに変える時に活躍します。
「主食は食べられるけれど、おかずは残してしまう…」
そんな日が続くと、ビタミンB1が不足しやすくなると言われています。
食後のだるさや、なんとなく元気が出にくい時には、見直したい栄養素です。
② ビタミンB12 & 葉酸:血液と細胞の健康に
赤血球の形成を助け、全身に酸素を運ぶ働きを支えます。
赤血球が元気に作られることは、毎日の体調の土台になります。
「最近、お肉やお魚の量が減っている」
そんな方は意識してみても良いかもしれません。
③ ビタミンB6:体づくりのサポートに
タンパク質を体内で活用する際に働き、筋肉・皮膚・粘膜の健康を支えます。
体力維持が気になるシニア世代にとって、心強い味方となる栄養素です。
■ビタミンB群を多く含む食品の例
【肉類】豚肉(ヒレ/モモ)、鶏肉(ささみ/胸肉)、赤身ハム、レバーなど
【魚類】イワシ、サバなど
【貝類】しじみ、あさりなど
【大豆製品】豆腐など
【その他】焼き海苔、バナナ、雑穀など
※それぞれ得意なビタミンB群を含む量が異なるため、バランスよく取り入れることが大切です。
4.台所でできる「ひと工夫」
「栄養バランス」と聞くと、献立をすべて作り変えなければならないように感じるかもしれませんが、その必要はありません。
難しい調理をしなくても、食材の選び方を少し工夫するだけで、ビタミンB群を補うことができます。
①主食に「色」を足す
いつもの白ごはんに、少しだけ雑穀などを混ぜてみるのもひとつの工夫です。
量が少なくても、外皮(ぬかや胚芽)を含む穀物を取り入れることで、
ビタミンB1などの栄養を補いやすくなります。
香ばしい風味が楽しめ、よく噛むことで満足感も得られやすくなります。
②保存できる「海の幸」を活用
天気が悪くて買い物に行けない日でも、常温で保存できる缶詰や乾物があれば安心です。
- 魚の缶詰
サバやイワシの缶詰など身近な魚の缶詰は、ストックしておけて便利です。
骨までやわらかく食べられるものが多く、栄養を手軽に取り入れられます。
ビタミンB群は水に溶けやすいため煮汁へ移りやすい栄養素です。
煮汁も一緒に味わうことで、無駄なく栄養を取り入れやすくなります。
- 海苔・かつお節
毎朝の食卓に並ぶ焼き海苔は、ビタミンB12や葉酸などを含む食品の一つとされています。
朝食のごはんに海苔を添えて食べるのも、栄養補給に役立つ食品の一つです。
➂手軽な食品をプラス
手間なく食べられる食品を「もう一品」加えてみましょう。
- 豆腐
大豆製品は、高齢の方に不足しがちな植物性のタンパク質とビタミンB群を含みます。
- バナナ
ビタミンB6や糖質を含み、食欲がない時のエネルギー補給にも適しています。
5.体をいたわる食べ方のヒント
「何を食べるか」と同じくらい大切なのが、「どう食べるか」です。
胃腸の働きも年齢とともに変化します。体に負担をかけず、栄養をスムーズに取り入れるための食べ方を意識してみましょう。
- 温かいものでお腹を温める
冷たい飲み物や食事は、胃腸を冷やし、働きを鈍らせてしまうことがあります。
食事の最初に温かいお茶や汁物を一口飲むことで、胃腸が温まり、リラックスして食事を楽しむ準備が整います。
また、ビタミンB群は水に溶けやすいため、汁物や煮込み料理で、食材の栄養を無駄なく取り入れやすくなる工夫としておすすめです。
- ゆっくり、よく噛んで食べる
「よく噛む」ことは、唾液の分泌を促し、食べ物を消化しやすい状態にします。
これは胃腸への負担を和らげるだけでなく、栄養素の吸収を助けることにもつながります。
また、一口ずつ味わって食べることは、生活のリズムを整え、脳への程よい刺激にもなると言われています。
急がず、ご自身のペースで食事の時間を楽しんでください。
6.栄養士の視点:毎日の食事が「明日への活力」
栄養バランスを整えることは、薬のように何か特別な効果をすぐに生むものではありません。
しかし、毎日の食事は、皆様の体を動かし、維持するための大切な「材料」であり、「元気の源」です。
少しずつでも「今の自分に合った食べ方」を続けることが、明日への活力につながることが期待できます。
年齢を重ねると、食事の量が減ったり、好みが変わったりするのはごく自然なことです。「完璧な食事」を目指して無理をする必要はありません。
今の生活の中で続けやすい、小さな工夫をひとつずつ取り入れていくことが何より大切です。
「今日はお昼にお蕎麦だけだったから、夜は豆腐を加えよう」
「ごはんに焼き海苔や海苔の佃煮を添えてみよう」
そんな小さな工夫と心遣いの積み重ねが、冬の健康的な食習慣づくりに寄与するといわれています。
美味しいと感じるものを、よく噛んで、楽しく召し上がってください。
その笑顔こそが、日々を健やかに過ごすための大切なエッセンスかもしれません。
【参考文献】
- 厚生労働省『日本人の食事摂取基準』
- 厚生労働省 e-ヘルスネット『ビタミン』
- 文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
- 農林水産省『食事バランスガイド』
【免責事項】
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、
個別の医療アドバイスや診断を目的としたものではありません。
お身体の状態はそれぞれ異なります。
持病をお持ちの方や食事制限が必要な方、また気になる点がある場合は、安全のため、必ず主治医(かかりつけ医)にご相談ください。