【食とくらしのコラム 第15話】

はじめに:夜のぬくもりを残した体を、朝へとならしていく時間

私たちの体は、夜の深い眠りに入る際、生命維持活動に必要な最小限のエネルギー消費に抑えるため、深い休息モードへと移行します。

このモードでは、体温、心拍数、そしてエネルギー消費が低く設定されます。

これは、日中の活動によって生じた疲労を修復し、翌日の活動モードに備えるための、体にとって最も重要なメンテナンスのプロセスです。

 

しかし、この徹底した休息から活動モードへの切り替えは、特に外気温が低い冬の朝には、体にとって負荷となります。

 

起床直後の体は、まだ深い休息の影響下にあり、外部の冷気に晒されることで、

以下のような「目覚めきれない状態」に陥りがちです。

 

  • 手足が冷たく縮こまっている
    体が熱を逃がさないようにギュッと縮こまるため、指先や足先が冷え切っています。

     
  • 胃腸がまだ「お休みモード」
    お腹の動きがゆっくりで、まだ朝ごはんを受け入れる準備が整いきっていません。

     
  • 頭がボーッとしてスイッチが入らない
    体温が上がりきっていないため、シャキッと目が覚めるまでに少し時間がかかります。

 

このような「体内のエンジンがまだ冷え切っている状態」を、無理な負荷をかけることなく、最も安全でスムーズな方法で活動モードへと移行させるためのアプローチが、朝の温かい「白湯」をゆっくりと楽しむ習慣です。

 

白湯は、体が必要とする水分を最も優しい形で供給し、内側から穏やかに熱を与えることで、体内のシステムに「穏やかな目覚めとスタート」の合図を送ります。

 

1.白湯(さゆ)が、体内の活動準備をそっと整えるシンプルなしくみ

朝に白湯をゆっくり飲むという行為は、余計な刺激がなく、

「やさしい水分補給」「ほんのり温まる感覚」に集中できます。

 

胃腸にやさしい水分補給

睡眠中は汗や呼気から水分が失われ、体は軽い脱水状態にあります。

白湯は、カフェイン、糖分などを含まないため、胃腸や腎臓に余計な負担をかけにくく、自然に水分補給ができます。

これにより、血液がめぐりやすい状態をサポートします。

 

内側からじんわり温まるやさしい刺激

温かい飲み物を摂ることで、食道から胃にかけてじんわりとした熱が伝わり、その温熱刺激によって消化管の動きが整いやすくなると考えられています。

 

たとえば、冷たい水はシャキッとする反面、寝起きの体にとっては急激な刺激となり、血管を収縮させてしまう懸念があります。

 

一方で、温かい白湯は体に無駄な緊張を与えずに受け入れられやすいのが特徴です。

胃の内側から穏やかに温まることで、その周辺の血流がサポートされ、眠っていた消化のリズムが自然と動き出すきっかけのひとつにつながる可能性があると考えられています。

 

まるで、寒い朝に冷え切ったエンジンの「暖気運転」をするようなイメージで、体を驚かせずに活動モードへ導く一助となることが期待されています。

 ※ただし、これらは一般的な健康習慣としての知見であり、その日の体調や個人の体質によって感じ方や反応には個人差がある点をご理解ください。

2. 白湯がくれる、小さな休息

朝に白湯を飲むひとときは、慌ただしい時間の中で、呼吸がふっと深くなる瞬間をつくり出します。

一日のスタートに、ほっと一息つく余裕をつくってくれます。

 

そっと温もりを感じる

カップのあたたかさや、ほわりと立つ湯気に触れるだけで、

自然と気持ちが落ち着いていくように感じられます。

 

ゆっくり飲むという動作がくれる余白

一口ずつ白湯を味わうと、呼吸がふっと深くなり、

まるで短い休息時間が訪れたように感じられることがあります。

 

【実践のコツ】たった一杯の白湯で、体内リズムを整える

白湯を飲むタイミングと量は、習慣化に大きく影響します。

朝のうちに温かい飲み物を取り入れることは、一日のリズムを整える工夫のひとつです。

 

起きてすぐでなくても、無理なく続けられるタイミングでかまいません。

最も重要なのは、「継続すること(習慣にすること)」です。

 

以下のポイントを参考に、無理なく毎日のルーティンに取り入れてみましょう。

 

✨ 今日から続く、3つの実践ポイント

①簡単な作り方で継続

やかんで沸騰させるのが理想ですが、忙しい朝は電気ケトルや電子レンジを活用しても構いません。

重要なのは、「白湯を飲む」という行為を毎日欠かさないことです。

 

②やけどしない温度まで冷まして飲む

沸かしたお湯をカップに注いだ後、飲む前に やけどをしない程度まで冷ましてから 飲み始めましょう。

熱すぎる場合は、口をつける前に少し待つことが重要です。

熱いと感じる温度で飲むと粘膜を傷つけるリスクがあります。

※高齢の方は熱さを感じにくい場合があるため、温度に気をつけてゆっくり飲んでください。

 

➂完璧を求めない(量より継続)

量はコップ1杯(150-200ml)が目安ですが、時間がない日は半分でも構いません。

また、飲み忘れた日があっても自分を責める必要はありません。

「また明日から」という気楽さが、長く続ける秘訣です。

3.小さな気づき~朝の「静寂」が、今日一日の動きを変える~

朝起きた瞬間から、「今日はあれをしなきゃ」「急いで支度をしなきゃ」と、頭と体がフル回転していませんか?

 

白湯を飲む時間は、そんな慌ただしい朝に、あえて「立ち止まる」ための時間です。

それは決して、時間を無駄にしているわけではありません。

 

これから始まる長い一日を、息切れせずに走り切るために、「呼吸と心を整える(チューニングする)」大切なひとときです。

 

「いきなり走り出すのではなく、まずは静かに温める」

 

楽器の演奏前には必ず音程を合わせる時間があるように、私たちの体にも、そんな「静かな準備時間」が必要です。

朝の一杯がくれる数分間の「余白」は、今日という一日を、より自分らしく、軽やかに過ごすための土台となってくれるはずです。

まとめ

  • 冬の朝は体温が低く「準備中」

睡眠により血流や内臓の働きがゆっくりな状態。温熱刺激と水分補給が欠かせない。

  • 白湯は一日の切り替えスイッチのような存在に

胃腸にやさしく水分補給でき、朝の活動モードへの切り替えを後押しします。

  • 心の安定効果

温かさと「ゆっくり飲む行為」が、気持ちを整えやすい時間をつくり、一日の心の準備をサポートする。

  • 習慣化

起床直後、白湯を「少量からでも継続する」ことが、体内リズムを整える重要な一歩となる。

 

【免責事項】

白湯を飲む習慣は、日本で古くから親しまれてきた伝統的な健康習慣の一つです。

本記事は、この習慣を一般的な健康知識の観点から解説したものであり、医学的な効果を実証するものではありません。

効果には個人差があります。

持病をお持ちの方や食事制限が必要な方、また気になる点がある場合は、安全のため、必ず主治医(かかりつけ医)にご相談ください。